2026年度から適用が開始される「新リース会計基準」への対応に、不安を感じていませんか?この新基準の最大のポイントは、これまでオフバランス処理が可能だったオペレーティングリースを含め、「原則すべてのリース契約を資産・負債として計上(オンバランス化)」することです。本記事では、この大きな変更がなぜ行われるのか、いつから誰が対象になるのかといった基本から、従来基準との違い、財務諸表や経営指標に与える具体的な影響まで、専門家が分かりやすく網羅的に解説します。さらに、企業が今すぐ着手すべき実務対応のステップも具体的に提示。この記事を読めば、新リース会計基準の全体像を正確に把握し、万全の準備を進めることができます。
新リース会計基準とは?2026年からの適用に向けた基本を解説
2023年5月、企業会計基準委員会(ASBJ)は「リースに関する会計基準(案)」(企業会計基準公開草案第73号)を公表しました。これが一般に「新リース会計基準」と呼ばれるもので、日本のリース会計に大きな変革をもたらします。これまで多くの企業で貸借対照表(BS)に計上されていなかった「オペレーティング・リース」についても、原則としてすべてのリース契約を資産・負債として計上(オンバランス化)することが求められるようになります。
この変更は、企業の財政状態や経営成績の表示に大きな影響を与えるため、経理・財務担当者だけでなく、経営層も含めた全社的な理解と準備が不可欠です。本章では、この新リース会計基準がなぜ導入されるのか、その背景と目的、そして国際的な会計基準との関係性について、基本から分かりやすく解説します。
新リース会計基準が導入される背景と目的
新リース会計基準が導入される直接的な背景には、従来の会計処理が抱えていた課題と、会計基準の国際的な潮流(コンバージェンス)があります。これまでの日本の会計基準では、リース取引は「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に分類されていました。このうち、実質的な資産の購入と変わらないファイナンス・リースは資産計上されていましたが、一般的な賃貸借契約に近いオペレーティング・リースは費用処理するだけで、貸借対照表には記載されませんでした(オフバランス取引)。
しかし、航空機や店舗、IT機器など、多額のオペレーティング・リースを利用して事業を行う企業では、貸借対照表に現れない巨額の債務が存在することになり、投資家が企業の財政状態を正確に把握できないという問題点が指摘されていました。そこで、財務諸表の透明性と企業間の比較可能性を高めるため、国際会計基準(IFRS)や米国会計基準に倣い、リース会計の見直しが行われることになったのです。
新リース会計基準の主な目的は、以下の3点に集約されます。
| 目的 | 内容 |
|---|---|
| 財務諸表の透明性向上 | これまでオフバランスであったオペレーティング・リースを資産・負債として計上することで、企業のリース利用の実態を財政状態計算書(貸借対照表)に正確に反映させます。 |
| 投資家への有用な情報提供 | 企業の資産と負債をより網羅的に表示することで、投資家が企業の信用リスクや将来のキャッシュ・フローをより適切に評価し、的確な投資判断を下せるようにします。 |
| 国際的な比較可能性の確保 | すでに同様の基準を導入しているIFRSや米国会計基準との整合性を図ることで、グローバルな投資家が日本企業の財務諸表を他国企業と比較しやすくします。 |
IFRS16号や米国会計基準との関係性
日本の新リース会計基準は、独立して生まれたものではなく、国際的な会計基準とのコンバージェンス(収斂)を強く意識して開発されています。特に、国際会計基準審議会(IASB)が公表した「IFRS第16号『リース』」が基礎となっています。
IFRS第16号は、2019年1月1日以後開始する事業年度からすでに適用されており、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分を撤廃し、借手に対して単一の会計処理モデル(使用権モデル)を要求しています。日本の新リース会計基準案も、この「使用権モデル」を基本的に踏襲しており、原則すべてのリースをオンバランス化する点で共通しています。
一方で、米国会計基準(ASC第842号)とは若干アプローチが異なります。米国会計基準では、リースを「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に分類する考え方自体は維持し、両方を資産・負債計上しつつも、損益計算書(PL)上での費用認識方法が異なる「デュアル・モデル」を採用しています。これに対し、日本の新基準案はIFRS第16号と同様に、原則として単一のモデルを採用している点が大きな特徴です。
このように、日本の新リース会計基準は、IFRS第16号とほぼ同等の内容を目指しつつ、一部に日本独自の実務を考慮した定めが置かれる見込みです。グローバルに事業を展開する企業にとっては、海外子会社で既に適用されているIFRS第16号との差異を正しく理解することが、グループ全体の会計処理を統一する上で重要なポイントとなります。
新リース会計基準はいつから適用?対象となる企業は?
日本の会計基準を大きく変える「新リース会計基準」。多くの企業にとって、いつから対応が必要で、自社が対象になるのかは最も気になる点でしょう。ここでは、企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した公開草案に基づき、新リース会計基準の適用開始時期と対象範囲について、具体的かつ分かりやすく解説します。
強制適用の開始時期
新リース会計基準の強制適用は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首からとされています。つまり、多くの日本企業が採用している3月決算の場合、2027年3月期の期首である2026年4月1日から適用が開始されます。これには四半期財務諸表も含まれるため、2027年3月期の第1四半期会計期間から新基準に沿った会計処理が必要です。
決算月ごとの具体的な適用開始タイミングは以下の通りです。
| 決算月 | 強制適用の開始年度 |
|---|---|
| 3月決算の企業 | 2027年3月期(2026年4月1日〜) |
| 12月決算の企業 | 2027年12月期(2027年1月1日〜) |
自社の決算期を確認し、いつから準備を本格化させるべきか、早期に計画を立てることが重要です。
早期適用の可否とメリット
今回の新リース会計基準では、強制適用を待たずに前倒しで適用する「早期適用」も認められています。具体的には、2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用することが可能です。
早期適用には、企業にとっていくつかのメリットが考えられます。
第一に、グローバル基準との早期な整合性を図れる点です。IFRS(国際財務報告基準)や米国会計基準を適用している海外子会社を持つ企業や、海外投資家からの資金調達を重視する企業にとって、会計基準を統一することで連結決算業務の効率化や財務諸表の比較可能性向上につながります。
第二に、計画的な移行と業務負荷の分散が可能になる点です。リース契約の洗い出しやシステム対応など、新基準への移行には多くの準備が必要です。早期適用を選択することで、強制適用間際の混乱を避け、余裕を持ったスケジュールで着実に移行作業を進めることができます。
これらのメリットを考慮し、自社の経営戦略や業務体制に合わせて早期適用を検討する価値は十分にあるでしょう。
適用対象となる企業と契約
新リース会計基準は、特定の業種や規模に限らず、原則としてリース契約を締結しているすべての企業が適用対象となります。特に、有価証券報告書を提出している上場企業や、会社法上の大会社、そしてそれらの子会社・関連会社は、会計監査も受けるため、厳密な対応が求められます。
また、対象となるのは「リース」の定義を満たすすべての契約です。新基準の最も大きな特徴は、従来の「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の区分が原則として廃止される点にあります。これにより、これまで費用処理(オフバランス)が可能だったオペレーティング・リース契約も、原則として資産・負債として貸借対照表(BS)に計上(オンバランス)する必要が生じます。
例えば、以下のような契約も対象に含まれる可能性が高まります。
- 本社や店舗の賃貸借契約
- コピー機や複合機のレンタル契約
- 社用車や営業車のリース契約
- サーバーなどのIT機器のレンタル契約
自社にどのような契約が存在し、そのうちどれが新基準における「リース」に該当するのかを正確に把握することが、実務対応の第一歩となります。
【徹底比較】新リース会計基準の変更点と従来基準との違い
2026年からの適用が予定されている新リース会計基準は、特に「借手」側の会計処理に大きな変革をもたらします。これまで多くの企業で費用処理(オフバランス)されてきたリース契約が、資産・負債として貸借対照表(B/S)に計上(オンバランス)されることになるためです。ここでは、従来の会計基準と何がどう変わるのか、その核心となる変更点を徹底的に比較・解説します。
最大の変更点「原則すべてのリースをオンバランス化」とは
新リース会計基準における最もインパクトの大きい変更点は、借手が行うリース取引について、原則としてすべてのリースを資産計上(オンバランス化)するという点です。これは、企業の財政状態をより忠実に財務諸表へ反映させることを目的としています。
ファイナンスリースとオペレーティングリースの区分廃止
従来の日本の会計基準では、借手はリース契約を「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」の2種類に分類していました。
- ファイナンス・リース取引: 実質的に資産を購入したのと同様の経済的実態を持つリース。資産と負債を計上(オンバランス)していました。
- オペレーティング・リース取引: 上記以外のリース。賃貸借処理として、支払リース料を費用として計上するのみ(オフバランス)でした。
新リース会計基準では、この借手における「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の区分が廃止されます。これにより、これまで多くの企業がオペレーティング・リースとして費用処理してきたコピー機やPC、車両などのリース契約も、原則として資産・負債として貸借対照表に計上する必要が生じます。
使用権資産とリース負債の計上
「すべてのリースをオンバランス化する」とは、具体的に何を計上するのでしょうか。新基準では、リース契約の開始日に、借手は以下の2つの勘定科目を貸借対照表に計上します。
- 使用権資産(資産)
- リース期間にわたって原資産(リース対象の物件)を使用する権利を表す資産です。原則として、後述するリース負債の当初測定額に、リース契約締結にかかった付随費用などを加算して計算されます。
- リース負債(負債)
- リース期間にわたって支払うべきリース料総額のうち、未払い分を現在価値に割り引いて計算した金額です。将来支払う義務を表す負債となります。
この処理により、これまで財務諸表の注記情報でしか把握できなかったオペレーティング・リースの実態が、貸借対照表上で明確に可視化されることになります。
借手の会計処理はどう変わる?
ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分がなくなることで、借手の会計処理は大きく変わります。特に、これまでオペレーティング・リースとして処理していた契約への影響は甚大です。以下に新旧の会計処理の違いをまとめました。
| 財務諸表 | 従来の会計処理(オペレーティング・リース) | 新リース会計基準 |
|---|---|---|
| 貸借対照表(B/S) | 計上なし(オフバランス) | 「使用権資産」を資産に、「リース負債」を負債に計上 |
| 損益計算書(P/L) | 支払リース料を費用計上 | 使用権資産の「減価償却費」とリース負債に係る「支払利息」を費用計上 |
従来のオペレーティング・リースでは、支払リース料が定額であれば、費用も毎年定額で計上されていました。しかし新基準では、費用が「減価償却費(多くは定額)」と「支払利息(当初大きく、徐々に減少)」の合計額となります。この結果、リース期間の初期に費用が大きく計上され、期間の経過とともに費用が減少していくという特徴があります。これにより、企業の利益計画にも影響を与える可能性があります。
貸手の会計処理の変更点
借手側に大きな変更が求められる一方、貸手側の会計処理については、現行の会計基準から大きな変更はないとされています。貸手は引き続き、リース契約を「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」に分類し、それぞれに応じた会計処理を行います。
これは、国際的な会計基準であるIFRS第16号や米国会計基準(ASC第842号)の考え方を踏襲したものです。ただし、リースを分類するための判定基準の詳細については、今後公表される公開草案などで確認が必要です。
例外的に資産計上しないケース(短期リース・少額リース)
新リース会計基準では、原則すべてのリースがオンバランス化の対象となりますが、実務上の負担を考慮し、例外的に資産計上せず、簡便的な処理(従来のオペレーティング・リースと同様の費用処理)が認められるケースがあります。それが「短期リース」と「少額リース」です。
- 短期リース
- リース開始日時点で、リース期間が12ヶ月以内であるリースを指します。例えば、3ヶ月間だけ借りるイベント用の機材などが該当します。ただし、借手がリースを延長するオプションを持っており、その行使が合理的に確実である場合など、実質的な期間が12ヶ月を超える契約は短期リースに該当しません。
- 少額リース
- リース対象となる原資産そのものの価値が少額であるリースを指します。例えば、PC、タブレット、事務用電話機、オフィス家具などが想定されます。この少額かどうかの判定は、リース料の総額ではなく、その資産が新品であった場合の価額で判断します。具体的な金額基準は今後の会計基準開発の中で明確化される予定ですが、IFRS第16号では参考として5,000米ドルという金額が示されています。
これらの例外規定を適用するかどうかは、企業が会計方針として選択することができます。多くのリース契約を抱える企業にとって、この例外規定をうまく活用することが、実務対応の負担を軽減する上で重要なポイントとなります。
新リース会計基準が財務諸表に与える影響
新リース会計基準の導入は、特にこれまで多くのリース契約をオフバランス処理してきた企業にとって、財務諸表の見た目を大きく変えるインパクトがあります。ここでは、貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)、キャッシュフロー計算書(CF)の各財務諸表と、主要な経営指標にどのような影響が及ぶのかを具体的に解説します。
貸借対照表(BS)への影響
新リース会計基準における最も大きな変更は、貸借対照表(BS)に現れます。従来、オペレーティングリースとして処理されていた契約はBSに計上されていませんでしたが、新基準では原則として全てのリース契約が資産・負債として計上されることになります。
具体的には、借手はリース期間にわたって資産を使用する権利を「使用権資産」として資産の部に、将来のリース料支払義務を「リース負債」として負債の部にそれぞれ計上します。これにより、これまでBSに現れていなかったリース契約が可視化され、総資産と総負債が同時に増加します。企業の財政状態がより実態に近く表示されるようになりますが、見た目上の企業規模が大きくなるという影響があります。
| 項目 | 従来基準 | 新リース会計基準 |
|---|---|---|
| 資産の部 | 計上なし | 「使用権資産」を計上(資産増加) |
| 負債の部 | 計上なし | 「リース負債」を計上(負債増加) |
損益計算書(PL)への影響
損益計算書(PL)では、費用の計上方法と内訳が変更されます。従来のオペレーティングリースでは、支払リース料が定額で費用として計上されていました。しかし、新基準では費用が2つの要素に分解されます。
- 減価償却費:資産計上された「使用権資産」の減価償却費
- 支払利息:負債計上された「リース負債」に係る利息費用
リース期間を通じた費用総額は従来と変わりませんが、各会計期間に計上される費用の金額が変動します。支払利息はリース負債の残高に基づいて計算されるため、残高の大きいリース期間の初期に費用が大きく計上され、期間の経過とともに減少していく「費用前倒し」の特徴があります。これにより、リース期間の初期は利益が圧迫され、後期は利益が大きくなる傾向があります。
また、営業利益の算出上、従来の「支払リース料」は販売費及び一般管理費に含まれましたが、新基準では「減価償却費」と「支払利息(営業外費用)」に分かれます。この結果、EBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)は、支払リース料が費用から除外される形になるため、増加する傾向にあります。
キャッシュフロー計算書(CF)への影響
キャッシュフロー計算書(CF)では、リース料支払いの表示区分が変更されます。これは実際の現金の動きが変わるわけではなく、会計上の分類が変わるという点に注意が必要です。
従来のオペレーティングリースでは、リース料の支払額の全額が「営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)」のマイナス項目として表示されていました。新基準では、リース料の支払いが元本返済部分と利息部分に分解されます。そして、利息部分は「営業CF」、元本返済部分は「財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)」のマイナス項目として表示されます。(なお、会計方針により利息部分を財務CFに表示することも可能です。)
この結果、多くの企業では営業CFが増加し、その分だけ財務CFが減少することになります。これにより、本業での資金創出能力を示す営業CFが実態以上に良く見える可能性があるため、財務分析の際には注意が必要です。
経営指標(ROA・自己資本比率など)へのインパクト
財務諸表の各数値が変動することにより、それらを基に算出される経営指標にも大きな影響が及びます。特に、リース契約を多用している企業は注意が必要です。
BSの総資産が増加するため、それを分母とする指標は悪化する傾向にあります。
- ROA(総資産利益率):総資産が増加するため、ROAは低下する傾向にあります。
- 自己資本比率:総資産が増加する一方で自己資本は変わらないため、自己資本比率は低下する傾向にあります。
また、リース負債の計上により負債が増加するため、安全性を示す指標も変動します。
- 負債比率・有利子負債依存度:負債が増加するため、これらの指標は上昇(悪化)する傾向にあります。
これらの指標の変動は、企業の経営実態が悪化したことを意味するわけではありません。しかし、金融機関との融資契約における財務制限条項(コベナンツ)に抵触するリスクも考えられるため、適用前に影響額を試算し、必要に応じて金融機関と協議しておくことが重要です。
| 経営指標 | 計算式 | 影響 | 主な理由 |
|---|---|---|---|
| ROA(総資産利益率) | 利益 ÷ 総資産 | 低下 | 分母である総資産が増加するため |
| 自己資本比率 | 自己資本 ÷ 総資産 | 低下 | 分母である総資産が増加するため |
| 負債比率 | 負債 ÷ 自己資本 | 上昇 | 分子である負債が増加するため |
| EBITDA | 営業利益 + 減価償却費 | 増加 | 支払リース料が減価償却費と支払利息に分解されるため |
企業が今すぐ始めるべき実務対応と準備
2026年からの強制適用までにはまだ時間があると感じるかもしれませんが、新リース会計基準への対応は決して一朝一夕で完了するものではありません。対象となる契約の特定から会計方針の決定、業務プロセスの再構築、そしてシステム対応まで、多岐にわたるタスクを計画的に進める必要があり、多くの企業で1年以上の準備期間を要すると見込まれています。手遅れになる前に、今すぐ準備に着手しましょう。
対応に向けたステップバイステップガイド
新リース会計基準への対応を円滑に進めるためには、体系的なアプローチが不可欠です。以下に、企業が踏むべき具体的なステップを解説します。
対象となるリース契約の洗い出しと把握
対応の第一歩は、社内に存在する全てのリース契約を正確に把握することです。これまでの会計処理では資産計上されていなかったオペレーティングリースも対象となるため、経理部門が管理している契約だけでなく、各事業部門が個別に契約している賃貸借契約やレンタル契約なども含めて、網羅的に洗い出す必要があります。
特に注意が必要なのは、「リース」という名称が含まれていない契約です。実質的に特定の資産を一定期間支配して使用する権利を得る契約であれば、新基準の対象となる可能性があります。例えば、サーバーのホスティング契約や、特定の車両を長期間利用する輸送サービス契約なども該当するケースがあるため、契約内容を精査し、識別することが重要です。洗い出した契約は、以下の項目を含む一覧表で管理することをお勧めします。
| 管理項目 | 内容・目的 |
|---|---|
| 契約部署・担当者 | 契約内容の問い合わせ先を明確化する |
| 契約相手先(貸手) | 契約の相手方を特定する |
| リース対象資産 | 資産の種類、数量などを具体的に記載する |
| 契約開始日・終了日 | リース期間を算定するための基礎情報 |
| リース料 | 支払総額、支払スケジュール(固定か変動かなど) |
| 延長・購入オプション | リース期間やリース料総額の算定に影響する条項の有無 |
| 契約書等の保管場所 | 原本や関連書類の所在を明確にする |
会計方針の決定と影響額の試算
対象契約の洗い出しが完了したら、次に自社の会計方針を決定します。最も重要な論点は、例外規定である「短期リース」と「少額リース」を適用するかどうか、そして適用する場合の具体的な基準(金額など)をどう設定するかです。
会計方針を固めた上で、各リース契約について使用権資産とリース負債の金額を算定し、新基準を適用した場合の財務諸表(BS・PL・CF)への影響額を試算します。このシミュレーションにより、自己資本比率やROA(総資産利益率)といった経営指標がどの程度変動するかを事前に把握できます。影響が大きい場合は、経営層への早期報告や、金融機関・投資家などステークホルダーへの説明準備が必要となります。
業務プロセスと社内規程の見直し
新リース会計基準の適用は、経理部門だけの問題ではありません。リース契約の締結から管理、会計処理に至るまでの一連の業務プロセスを見直す必要があります。具体的には、以下のような点が挙げられます。
- 契約管理プロセスの見直し:各部門で契約を締結する際に、新基準の適用対象となるか否かを判断し、必要な情報を経理部門へ連携するフローを構築する。
- 会計処理プロセスの構築:使用権資産とリース負債の計上、減価償却費と支払利息の計算、契約変更時の再測定など、新たな会計処理に対応した業務フローを整備する。
- 関連規程の改訂:「経理規程」や「固定資産管理規程」などに、新リース会計基準に関する項目を追加・修正する。必要に応じて「リース管理規程」を新たに策定することも有効です。
これらの見直しを通じて、全社的な情報連携体制を確立し、継続的に正確な会計処理を行える仕組みを構築することが、内部統制の観点からも極めて重要です。
リース管理システムの導入で業務を効率化
リース契約の件数が多い企業にとって、Excelなどを用いた手作業での管理は限界があります。複雑な計算や契約情報の変更管理には膨大な工数がかかる上、人的ミスや属人化のリスクも高まります。そこで有効なのが、新リース会計基準に対応した「リース管理システム」の導入です。
システムを導入することで、以下のようなメリットが期待できます。
- 契約情報の一元管理による網羅性の確保
- 使用権資産・リース負債の複雑な計算の自動化
- 会計仕訳の自動生成と会計システムへの連携
- 契約変更や再評価への迅速な対応
- 財務諸表への影響額シミュレーションの効率化
- 監査対応に必要な資料作成の迅速化
プロシップなど専門システムの活用メリット
新リース会計基準への対応においては、株式会社プロシップが提供する「ProPlus」のような、固定資産管理・リース資産管理に特化した専門システムの活用が非常に効果的です。これらの専門システムは、会計基準の変更に迅速に対応するだけでなく、豊富な導入実績に基づくノウハウが反映されている点が大きな強みです。
単に計算を自動化するだけでなく、契約のライフサイクル全体(見積取得、稟議、契約、検収、変更、解約など)を管理し、関連する文書ファイルを紐づけて保管する機能も備わっています。これにより、会計処理の正確性と効率性を飛躍的に向上させると同時に、ペーパーレス化の推進や監査対応の負荷軽減、強固な内部統制の構築にも貢献します。自社の事業規模や特性、既存システムとの連携性を考慮し、最適なシステムの導入を検討することが、新基準対応を成功させる鍵となります。
まとめ
本記事では、2026年度からの適用が予定されている「新リース会計基準」の概要から実務対応までを網羅的に解説しました。最大の変更点は、これまでオフバランス処理が可能だったオペレーティングリースを含め、原則すべてのリース契約を資産・負債として貸借対照表に計上(オンバランス化)する点です。
この変更は、企業の総資産を増加させ、ROAや自己資本比率といった経営指標に大きな影響を与える可能性があります。そのため、自社の財務状況を正確に把握し、ステークホルダーへ適切に説明するためにも、早期の対応が不可欠となります。
適用開始に向けて、まずは全社的なリース契約の洗い出しと内容の把握から着手し、会計方針の決定、影響額の試算、業務プロセスの見直しへと進めましょう。リース契約が多い企業では、プロシップなどのリース管理システム導入も業務効率化の有効な選択肢です。計画的な準備が、新基準へのスムーズな移行を実現する鍵となります。
